2026年9月1日(現地時間)、Claudeの新しいモデルが2つ、同時に発表されました。
「Claude Fable 5.1」と「Claude Mythos 5.1」。
名前が2つ並ぶと、どちらを使えばいいのか迷います。
ところが調べてみると、この2つは中身が同じモデルでした。
違うのは、かけられている安全装置の水準だけです。
結論から言うと、Claudeをアプリで使っているだけなら、今回の発表でやることはありません。
関係があるのは1点だけです。
同じ資料を何度もAIに読ませる使い方をしている会社は、その部分の料金が4分の1になりました。
この記事でわかること
- 発表された2つのモデルは何が違うのか
- 値下げされたのはどの部分で、どういう使い方だと効くのか
- 性能はどれくらい上がったのか
- AIが書いた文章に入るようになった「印」の話
同じモデルが、2つの名前で出た
2つの違いはこうなっています。
| Claude Fable 5.1 | Claude Mythos 5.1 | |
|---|---|---|
| 誰が使えるか | 誰でも | 審査を通った組織だけ |
| 対象の分野 | 制限なし | サイバーセキュリティとライフサイエンス |
| 安全装置 | 通常 | 専門の業務に合わせて緩めてある |
| モデルの中身 | 同じ | |
Mythos のほうは、審査を通ったサイバーセキュリティとライフサイエンスの組織にだけ提供されます。
この2つの分野では、通常の安全装置が仕事の邪魔になることがあるためです。
たとえばセキュリティの会社が「この仕組みにどんな弱点があるか調べてほしい」と頼んだとき、普通のAIは答えを渋ります。
攻撃に使われる情報だからです。
その加減を、審査を通した相手にだけ変えている。それが Mythos です。
ただし、いまのところ対象はアメリカの組織だけです。
提供範囲を広げるかどうかは、アメリカ政府と調整中とのことでした。
日本の会社が今すぐ使えるものではありません。
ふつうの会社が使うのは Fable 5.1 のほうです。
Fable 5.1 でも、弱点探しは一部できるようになった
Fable 5.1 のほうにも変更がありました。
ソフトウェアの弱点(脆弱性)を見つける作業が、守るための目的ならできるようになっています。
一方で、この3つは Fable 5.1 では扱わず、Opus 系のモデルに回されます。
- 侵入テスト
- 攻撃に使う道具(エクスプロイト)の生成
- プログラムの中身を直接調べる形の脆弱性スキャン
禁止されたわけではなく、担当するモデルが分けられました。
値下げは「キャッシュ読み取り」だけ。ただし4分の1
今回いちばん大きな変更が、料金です。
ただし、全部が安くなったわけではありません。
| 種類 | 100万トークンあたり | 変更 |
|---|---|---|
| 入力(AIに渡す文章) | 10ドル | 据え置き |
| 出力(AIが返す文章) | 50ドル | 据え置き |
| キャッシュ読み取り | 0.25ドル | 75%の引き下げ |
| キャッシュ書き込み(5分) | 12.50ドル | 据え置き |
| キャッシュ書き込み(1時間) | 20ドル | 据え置き |
キャッシュ読み取りだけが下がりました。
Anthropicの説明では、前の Fable 5 と比べて、ふつうの使い方で費用が約25%減。
複雑なプログラム開発など、渡す資料が使用量の大半を占める使い方では、最大で約45%減になります。
キャッシュとは何か
AIに質問するとき、毎回いっしょに渡している文章があります。
社内のルール、商品の一覧、過去のやり取り。
これらは質問のたびに読み直されていて、そのたびに料金がかかっています。
キャッシュは、この「毎回同じ文章」を覚えておく仕組みです。
1回目に覚えさせるときは、少し高い料金がかかります(上の表の「書き込み」)。
2回目からは、覚えたものを読むだけなので安くなります(「読み取り」)。
今回、その読み取りが100万トークンあたり0.25ドルになりました。
ふつうに渡す場合は10ドルなので、40分の1です。
どういう使い方だと効くのか
効くのは、こういう使い方をしている会社です。
- 社内の規程やマニュアルを毎回AIに読ませて、質問に答えさせている
- 商品の一覧を渡して、問い合わせへの返信を作らせている
- 長い会話を続けながら作業を任せている
どれも「同じ長い文章を、何度も読ませる」形です。
逆に、その都度ちがう短い質問をするだけなら、キャッシュは働きません。
値下げの恩恵もありません。
アプリで使っている場合はどうなるか
Claudeのアプリを月額で使っているだけなら、料金の変化は体感できません。
上の料金表はAPI(プログラムからAIを呼ぶ仕組み)と、それを使って動く仕組みの話で、月額プランとは別の勘定だからです。
アプリ側で変わったのは、5時間ごと・週ごとの使用量のカウントが、一度ゼロに戻されたことくらいでした。
上限の値そのものが増えたわけではありません。
ただし、AIを業務に組み込んでいる会社や、これから組み込もうとしている会社にとっては、見積もりが変わる話です。
料金の仕組みそのものは、こちらに書いています。
生成AIの料金はなぜ膨らむ?仕組みと下げ方を初心者向けに図解
性能は、分野によって上がり方が違う
公表されているベンチマーク(性能を測る共通のテスト)の結果です。
| テストの名前 | Claude Fable 5 | Claude Fable 5.1 |
|---|---|---|
| Terminal-Bench-Science 0.1(科学研究の作業) | 24.7% | 52.6% |
| Terminal-Bench 4.0(AIが自分でコマンドを打って進める作業) | 42.0% | 55.8% |
| CursorBench 3.2.0(プログラムの作業) | 70.5% | 73.4% |
科学研究の作業で、24.7%から52.6%へ。倍以上になっています。
プログラムの作業は、テストによって差がありました。
Terminal-Bench 4.0 は13.8ポイント伸びていますが、CursorBench 3.2.0 は2.9ポイントです。
同じ「プログラムの作業」でも、測り方が違うと伸びも違います。
「新しいモデルが出た=全部が同じだけ良くなった」ではありません。
自社が任せている作業がどれに近いかで、体感は変わります。
なお、資料作成や分析といった知識労働を測るテスト(GDPval-AA v2)もあり、こちらは1723から1853に上がっています。
使える場所と、モデルの名前
Fable 5.1 は、AWS・Google Cloud・Microsoft Azure を含むすべてのプラットフォームで提供されます。
APIから呼ぶときのモデル名は claude-fable-5-1 です。
従来のモデルが消えるわけではありません。選べるモデルが1つ増えました。
企業向けには「Enterprise Frontier Safeguards」という仕組みが、この秋以降に展開される予定とのことです。
AIが書いた文章に、印が入るようになった
Fable 5.1 と Mythos 5.1 の出力には、AIが作ったものだと分かる印(ウォーターマーク)が入るようになりました。
会社によっては、値下げよりこちらのほうが関係するかもしれません。
EUのAI法にもとづく取り決めで、2026年8月2日より後に公開されたモデルが対象です。
印には、誰が使ったかという情報は含まれません。
印を読み取るための仕組み(検出API)は、いまのところ限られた相手にだけ提供されています。
規制当局、法執行機関、報道機関、ファクトチェックの団体、研究者、教育機関などです。
順次広げる予定とされていますが、時期は公表されていません。
いますぐ誰かに見破られるという話ではありません。
ただ、AIで書いた文章をそのまま自社サイトに載せているなら、頭の片隅に置いておきたい話です。
同じAIでも、渡す相手で制限が変わる時代になった
今回の発表で、いちばん引っかかったのがここでした。
Mythos は、中身が Fable 5.1 と同じです。
それなのに別の名前が付いて、審査を通した組織にだけ配られます。
性能ではなく、誰に渡すかで製品が分かれた。
これは、使う側にも関係してきます。
業種や用途によって、使えるAIや使える範囲が変わっていく可能性があるからです。
いま「どのAIが賢いか」で選んでいるなら、そこに「自社の業務で、そのAIは何を断るか」という基準が増えます。
中小企業がいまやること
アプリで使っているだけなら、何もしなくて大丈夫です。
モデルが1つ増えただけで、いまの使い方は変わりません。
AIを業務に組み込んでいるなら、キャッシュを使っているか確認してください。
毎回同じ資料を渡している処理があるなら、そこを設計し直すと費用が下がります。
外注しているなら、「キャッシュは効いていますか」と1つ聞くだけで話が進みます。
これから導入するなら、見積もりの前提が変わったことを伝えてください。
2026年9月より前に出してもらった見積もりは、値下げ前の単価で計算されている可能性があります。
AI用語がまだ引っかかる方は、こちらもどうぞ。
AI用語100選|ニュース・社内の会話・提案書で出てくる言葉を一覧で
ほかの記事は、こちらにまとめています。
中小企業のAI活用ガイド|何から始める?業務別の使い方まとめ
モデルの名前より、自社の使い方から
新しいモデルの名前は、これからも増えていきます。
そのたびに追いかけるより、自社が何を任せているかが分かっているほうが、判断は早くなります。
次のどれかに心当たりがあれば、一度話を聞かせてください。
- AIの料金が何で決まっているのか、把握できていない
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参考にした情報
Anthropic、「Claude Fable 5.1」「Claude Mythos 5.1」を発表(窓の杜)
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