AIで過去の問い合わせメールを分析し、問い合わせ対応を整備してみた話
問い合わせ対応の負担は少数でも地味に重い
問い合わせ対応は、件数が多くなくても地味に負担が大きい業務ではないでしょうか。
毎回ゼロから返信を書いたり、過去のやり取りを検索し直したり、担当者ごとに言い回しがぶれたりすると、少しずつ時間が削られていきます。
今回は、弊社のクラウドサービスの問い合わせ対応を題材に、過去メールとサービス資料をAIで整理し、返信テンプレートと文体ガイドを整備した流れをまとめます。
やってみて感じたのは、AI は派手な自動化よりも、既存の業務ログを再利用しやすい資産に変える用途でかなり使いやすいということでした。

この記事でわかること
- AI にどこまで任せたのか
- 実際に何が成果物として残ったのか
- 人間がどこを直したのか
- 問い合わせ対応や FAQ 整理が AI と相性がよい理由
今回の前提:資料もメールもあるのに、再利用しにくかった
今回の対象は、弊社のクラウドサービスに関する問い合わせ対応です。
利便性を考えて、独自ドメインのメールを Gmail で使えるようにしています。
そのため、過去のやり取りは検索できるし、Google のエクスポートでメールデータとして扱える状態にあり、サービス説明の資料も別に用意してありました。
ただ、それだけでは十分ではありませんでした。
サービス資料はあっても、問い合わせ対応でよく使う返答の型や、自社らしい言い回しのルールまでは整理されていなかったからです。
結果として、過去メールを検索して探したり、毎回少しずつ書き直したりする運用になっていました。
今回やってもらったこと
過去ログを整理し、使い回せる形に変えた
今回の作業では、製品情報とメールのエクスポートデータは自分で用意しましたが、それ以外はほぼAIに丸投げで整理してもらいました。
メールのサイズは 56MB で、全体では557通ありました。
しかも、その中にはサポートのメールアドレス宛の関係のない外部メールも70通含まれていました。
そこで、実務上価値が高い問い合わせを自動で分類し直してもらい、導入相談、料金、支払い、解約、再開、データ移行、機能要望、不具合調査などのカテゴリで整理を進めてもらいました。
自分でやったら気が遠くなる面倒で絶対にやりたくない作業ですが、AIなら正確にものの数分でやってくれます。
最終的に、14本の返信テンプレート が作成され、それぞれに検索しやすいように template_id、intent、tags、keywords、placeholders を付けてくれました。
テンプレートを作るだけでなく、後から検索しやすく、運用しやすい形にしたのが今回のポイントです。

AI にやらせて良かったこと
今回、AI に任せて特に良かったのは、まず全体像をつかむところでした。
56MB のメールを前にすると、人間がざっと見て傾向をつかむだけでもそれなりに大変です。
その点、AI は過去データの棚卸しが得意で、よくある問い合わせのカテゴリや、回答文の定型、繰り返し出てくる問い合わせを短時間で洗い出しやすいと感じました。
さらに、単に分類するだけでなく、検索しやすい形でテンプレートの叩き台に落とし込めたのも大きかったです。
さらに今回の収穫は、テンプレート本文そのものより、今後AIに自動で回答を作らせるために過去返信の文体や気遣いのクセを抽出できたことだったと思います。
テンプレ化だけでなく、文体ガイドが残ったのが大きかった
テンプレートがあるだけでも人間が返信を行う際はだいぶ効率化ができます。
ただ、もっと効率化を目指すならAIに下書きまで作らせるのがベストです。
その際に気になるのは、AIが書く文章と自分が書く文章の違いです。
「どういう温度感で返すか」「どういう言い回しを使うか」といったところが違うと、結局は自分で書き直しってことにもなりかねません。
そこで、今回は過去返信から回答文の傾向とクセを分析し、文体ガイドも作りました。
これによって、言い回しのばらつきを抑えながら、自社らしい返信を再現しやすくなります。
問い合わせ対応では、正しい情報を返すことに加えて、相手が受け取ったときにきつく見えないことも大切です。
その意味でも、テンプレートと文体ガイドをセットで整えた価値は大きかったと感じています。
人間が直したポイント
気遣いの微調整は最後に必要だった
一方で、AI が出した文面をそのまま使えばよかったわけではありません。
実際の問い合わせを使って回答文を作らせると、内容自体は合っていても、気遣いが少し足りない場面がありました。
たとえば、相手の心情や感情を汲み取って文章に反映が必要な場面でも、AIは淡々と回答することがあります。
そこについては、別途修正が必要でしたが、それも今後の方針に加えることで次回の回答の精度は上がるはずです。
やはり、このあたりは人間が見る前提で進めるほうが安全です。
AI が全部やるというより、違和感のある場所を人間が指摘しながら仕上げるほうが、実務では安定しやすいと思います。

実際に残った成果物
- 問い合わせ分析メモ
- 返信テンプレート集
- 検索用インデックス
- 回答文の傾向分析
- 文体ガイド
作って終わりではなく、次の対応にも使い回せる形で残ったのが今回の成果でした。
「良い返信が書けた」で終わるのではなく、今後の運用で再利用できる状態にしておくことが重要だったと感じます。
こういう業務は AI と相性が良い
今回の経験から見ると、次のような業務は AI と相性が良さそうです。
- 問い合わせメール整理
- FAQ 作成
- 社内テンプレ整備
- 過去対応のナレッジ化
- 自社文体の抽出
どれも派手な開発案件ではありませんが、日々の運用を少しずつ軽くしやすい領域です。
品質を落とさずに早くする、という意味では、こうした整理業務のほうが現実的な効果を出しやすいのかもしれません。

まとめ:AI は既存業務の整理から入れると実務で効きやすい
今回の取り組みでは、過去メールの分類、返信テンプレート14本の整備、文体ガイド作成までを進めました。
やってみて分かったのは、AI は分類と叩き台づくりにかなり強い一方で、相手の感情に関わる最後の調整は人間が見たほうがよいということです。
それでも、ゼロから作るより圧倒的に速く、しかもナレッジとして残せるのは大きな利点でした。
AI を入れるなら、まずは派手な自動化より、既存業務の整理から始めるほうが現実的です。
問い合わせ対応や FAQ、テンプレ整備のような地味だけれど重要な業務こそ、AI 活用の入口としてかなり相性が良いと思います。

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