問い合わせ対応をAIで効率化するには、まず過去メールを整理する
毎回ゼロから返信文を書き、過去のやり取りを検索し直し、担当者ごとに言い回しがぶれる。
件数が多くなくても、問い合わせ対応は地味に時間を削られる業務ではないでしょうか。
結論から言うと、過去の問い合わせメールとサービス資料をAIに渡せば、よくある質問を分類して返信テンプレートを作り、自社らしい文体まで再現できる状態に整えられます。
今回は、弊社のクラウドサービスの問い合わせ対応を題材に、過去メールとサービス資料をAIで整理し、返信テンプレートと文体ガイドを作った流れを実例でまとめます。
やってみて感じたのは、AIは派手な自動化よりも、既存の業務ログを再利用しやすい資産に変える用途でかなり使いやすいということでした。

この記事でわかること
- 問い合わせ対応をAIで効率化するときに、AIへどこまで任せられるのか
- 返信テンプレートの作り方と、後から探しやすくする工夫
- AIの返信を自社らしくする文体ガイドの役割
- 人間がどこを直したのか(気遣いの最終調整)
先に結論の3つのポイント
- 過去メールをAIで分類し、返信テンプレートと検索用の目印を一気に整えられる
- 過去返信から文体のクセを抽出すれば、AIの下書きが自社らしくなり書き直しが減る
- 情報の正しさはAI、相手への気遣いの最終調整は人間、と役割を分けると安定する
この記事は、中小企業のAI活用ガイドでもまとめて紹介しています。ほかの活用例もあわせてご覧ください。
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なぜ「資料もメールもある」のに再利用しにくいのか
今回の対象は、弊社のクラウドサービスに関する問い合わせ対応です。
利便性を考えて、独自ドメインのメールをGmailで使えるようにしています。
そのため、過去のやり取りは検索できるし、Googleのエクスポートでメールデータとして扱える状態にあり、サービス説明の資料も別に用意してありました。
ただ、それだけでは十分ではありませんでした。
サービス資料はあっても、問い合わせ対応でよく使う返答の型や、自社らしい言い回しのルールまでは整理されていなかったからです。
結果として、過去メールを検索して探したり、毎回少しずつ書き直したりする運用になっていました。
問い合わせ対応をAIで効率化する前に、まずこの「探し直し」と「書き直し」をなくす必要があったわけです。
過去メールをAIで分類し、返信テンプレートに変える
557通のメールを数分で分類してもらった
今回の作業では、製品情報とメールのエクスポートデータは自分で用意しましたが、それ以外はほぼAIに丸投げで整理してもらいました。
メールのサイズは56MBで、全体では557通ありました。
しかも、その中にはサポートのメールアドレス宛の関係のない外部メールも70通含まれていました。
そこで、実務上価値が高い問い合わせを自動で分類し直してもらい、導入相談、料金、支払い、解約、再開、データ移行、機能要望、不具合調査などのカテゴリで整理を進めてもらいました。
自分でやったら気が遠くなる面倒で絶対にやりたくない作業ですが、AIなら正確にものの数分でやってくれます。
返信テンプレート14本に「探しやすい目印」を付けた
最終的に、14本の返信テンプレートが作成され、それぞれに検索しやすいように template_id、intent、tags、keywords、placeholders を付けてくれました。
これは、問い合わせ テンプレートの作り方として大事なところです。
テンプレートを作るだけでなく、後から検索しやすく、運用しやすい形にしたのが今回のポイントでした。
目印がないと、テンプレートは増えるほど「どれを使えばいいか分からない」状態になりがちです。
タグやキーワードで引ける状態にしておくと、対応する場面ごとにすぐ呼び出せます。

AIに任せて良かったのは「全体像の把握」と「文体の抽出」
今回、AIに任せて特に良かったのは、まず全体像をつかむところでした。
56MBのメールを前にすると、人間がざっと見て傾向をつかむだけでもそれなりに大変です。
その点、AIは過去データの棚卸しが得意で、よくある問い合わせのカテゴリや、回答文の定型、繰り返し出てくる問い合わせを短時間で洗い出しやすいと感じました。
さらに、単に分類するだけでなく、検索しやすい形でテンプレートの叩き台に落とし込めたのも大きかったです。
そして今回の一番の収穫は、テンプレート本文そのものより、今後AIに自動で回答を作らせるために過去返信の文体や気遣いのクセを抽出できたことでした。
メール返信をAIで効率化するカギは「文体ガイド」
テンプレートがあるだけでも、人間が返信を行う際はだいぶ効率化ができます。
ただ、もっと効率化を目指すなら、AIに下書きまで作らせるのがベストです。
その際に気になるのは、AIが書く文章と自分が書く文章の違いです。
「どういう温度感で返すか」「どういう言い回しを使うか」といったところが違うと、結局は自分で書き直し、ということにもなりかねません。
これは、メール返信をAIで効率化しようとしたときに最初にぶつかる壁ではないでしょうか。
そこで今回は、過去返信から回答文の傾向とクセを分析し、文体ガイドも作りました。
これによって、言い回しのばらつきを抑えながら、自社らしい返信を再現しやすくなります。
問い合わせ対応では、正しい情報を返すことに加えて、相手が受け取ったときにきつく見えないことも大切です。
その意味でも、テンプレートと文体ガイドをセットで整えた価値は大きかったと感じています。
AI任せで大丈夫? 人間が直したのは「気遣い」だった
ここで、多くの人が気になる点に触れておきます。
問い合わせ対応をAIに任せると、事務的で冷たい返信になって、顧客に失礼にならないか、という不安です。
実際、AIが出した文面をそのまま使えばよかったわけではありませんでした。
実際の問い合わせを使って回答文を作らせると、内容自体は合っていても、気遣いが少し足りない場面がありました。
たとえば、相手の心情や感情を汲み取って文章に反映が必要な場面でも、AIは淡々と回答することがあります。
そこについては別途修正が必要でしたが、それも今後の方針に加えることで、次回の回答の精度は上がるはずです。
やはり、このあたりは人間が見る前提で進めるほうが安全です。
AIが全部やるというより、違和感のある場所を人間が指摘しながら仕上げるほうが、実務では安定しやすいと感じました。

実際に残った成果物
- 問い合わせ分析メモ
- 返信テンプレート集
- 検索用インデックス
- 回答文の傾向分析
- 文体ガイド
作って終わりではなく、次の対応にも使い回せる形で残ったのが今回の成果でした。
「良い返信が書けた」で終わるのではなく、今後の運用で再利用できる状態にしておくことが重要だったと感じます。
こういう業務はAIと相性が良い
今回の経験から見ると、次のような業務はAIと相性が良さそうです。
- 問い合わせメール整理
- FAQ作成
- 社内テンプレ整備
- 過去対応のナレッジ化
- 自社文体の抽出
どれも派手な開発案件ではありませんが、日々の運用を少しずつ軽くしやすい領域です。
品質を落とさずに早くする、という意味では、こうした整理業務のほうが現実的な効果を出しやすい領域です。
どこから手をつければいいか迷うときは、AI活用診断で、自社のどの業務がAIと相性が良いかを確認してみるのも一つの方法です。

まとめ:問い合わせ対応のAI化は「既存業務の整理」から始める
今回の取り組みでは、過去メール557通の分類、返信テンプレート14本の整備、文体ガイド作成までを進めました。
やってみて分かったのは、AIは分類と叩き台づくりにかなり強い一方で、相手の感情に関わる最後の調整は人間が見たほうがよいということです。
それでも、ゼロから作るより圧倒的に速く、しかもナレッジとして残せるのは大きな利点でした。
問い合わせ対応をAIで効率化するなら、まずは派手な自動化より、過去メールとテンプレートの整理から始めるほうが現実的です。
問い合わせ対応やFAQ、テンプレ整備のような地味だけれど重要な業務こそ、AI活用の入口としてかなり相性が良い領域です。
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